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給与ファクタリングと給与前払いサービスの違いとは?

[2021.05.17]

目次

    皆さんは「給与ファクタリング」や「給与前払いサービス」をご存じでしょうか。

    給与ファクタリングとは、給与所得者(会社員など)の「賃金債権」を業者が買い取ることによって、給与支払日の前に現金を受け取ることを可能にする金融サービスです。他方、給与前払いサービスは企業が従業員のために福利厚生の一環として導入するものです。

    いずれも「給与の支払日になる前に現金を受け取れる仕組み」ですが、さまざまな点で違いがあります。そこで本記事では給与ファクタリングと給与前払いサービスの違いや、それぞれの仕組みやメリット・デメリットを徹底解説します。

    給与ファクタリングとは

    以前から事業者向けに現金調達方法の一つとして「ファクタリング」と呼ばれるサービスが業者によって提供されてきました。

    事業者向けファクタリングでは、ファクタリング業者が売掛債権を買い取り現金を事業者に受け渡します。一定の手数料がかかるものの、予定されている代金請求日の前に現金を入手できるため、資金繰りが悪化している企業はファクタリングを利用することがあります。

    この仕組みを個人向けに応用したサービスが「給与ファクタリング」です。給与ファクタリング業者は、給与所得者が勤務先に対して有する賃金債権を買い取り、現金を受け渡します。手数料が差し引かれるものの、次回の給与をすぐに受け取れるため、「給与支払日が到来する前に、現金が必要」という事情を抱えている会社員の中には利用を希望する方がいるかもしれません。

    ちなみに、事業者向けファクタリングでは「債権者」「ファクタリング業者」「債務者」の間で契約を締結する3者間取引、「債権者」と「ファクタリング業者」の間でのみ契約を結ぶ2者間取引があります。3者間取引では、ファクタリング業者が債権者に手数料を差し引いた金額を支払った後、ファクタリング業者が債務者から回収するという流れになります。

    なお、2者間取引ではファクタリング業者が債権者に手数料を差し引いた金額を支払った後、債権者自身が債務者から回収を行なってファクタリング業者に受け渡すという流れになります。そのため債務者は「債権者がファクタリング業者を利用している事実」を認識することはありません。

    ところで、給与ファクタリングで3者間取引を実行しようとすると業者が給与所得者に手数料を差し引いた金額を支払った後、業者が勤務先から回収することになります。

    労働基準法の「賃金の直接払いの原則」に反することになり、実行不可能であるため給与ファクタリングは「給与所得者」と「給与ファクタリング業者」の2者間取引となります。そのため勤務先は「労働者が給与ファクタリングを使用している事実」を認識しません。

     

    給与ファクタリング

    給与ファクタリングの仕組み

    給与ファクタリングでは、「将来支払われる予定の給与(賃金債権)」を担保とすることによって、給与支払日が到来する前に現金を受け取れます。具体的な流れは以下の通りです。

    ・過去の給与額をもとに審査し、利用可能額を算出
    ・業者が賃金債権を買い取り、労働者に現金を受け渡す
    ・給与支払日が到来後、業者が債権の回収を実行する(労働者を介して)

    業者に対して手数料を支払う必要があり、その分を差し引いた金額が受け渡される点に留意してください。

    「給与の直接払いの原則」により、業者は直接勤務先から賃金債権の回収を実行できません。そのため労働者が勤務先から受け取った後に業者に振り込むことになります。

    労働者側にとっては「勤務先に事情を知られずに済む」という利点がありますが、業者側にとっては未回収となるリスクがあるため、手数料が高めに設定される傾向が見受けられます。

     

    給与ファクタリングと給与前払いサービスの違い

    給与ファクタリングと給与前払いサービスには「仕組み」「法的位置づけ」「手数料」「リスク」といった点で違いがあります。以下、詳しく説明していきます。

    3.1仕組みの違い

    給与ファクタリングと給与前払いサービスは、「契約する主体」および「振り込まれる金額」について、次のような違いがあります。

    ・給与ファクタリング:労働者と業者が契約、過去の実績(給与)から算出
    ・給与前払いサービス:勤務先と業者が契約、実際の労働時間で算出

    給与ファクタリングは、業者が給与所得者個人に対して提供する「金融サービス」です。それに対し、給与前払いサービスは、勤務先が「福利厚生制度」として導入するものです。

    また、給与ファクタリングは、給与所得者が給与ファクタリング業者に「賃金債権」を買い取ってもらうことにより、現金が受け渡される仕組みになっており、過去の給与額が審査されて利用可能額が決定されます。他方、給与前払いサービスは、すでに勤務した日数(労働時間)に基づいて利用可能額が決まります。

    3.2法的位置づけの違い

    金融庁は給与ファクタリングについて、「労働者が使用者に対して有する賃金債権を買い取って金銭を交付し、当該個人を通じて当該債権にかかる資金の回収を行うことは、貸金業に該当する」という主旨の指摘をしています。貸金業者として登録されていない給与ファクタリング業者に関しては、貸金業法に違反している可能性を否定できません。

    他方、給与前払いサービスは賃金債権が譲渡されるわけではなく、「実際に働いた分」を給与支払日到来前に支給するだけです。なお、過去に給与前払いサービス提供業者が産業競争力強化法に基づく「グレーゾーン解消制度」による照会をした際、金融庁から「給与前払いサービスは、貸金業に該当しない」という主旨の回答を得ています。

    3.3手数料の違い

    給与ファクタリングの手数料は極めて高く、年利に換算すると数百%を超えるケースが多数存在します。中には、反社会的勢力とのつながりが疑われる「闇金業者」が営業している悪質なケースもあり、金融庁が注意喚起をしています。

    それに対して、給与前払いサービスは手数料が少ないことが特長です。業者によって異なりますが「労働者側の負担はATMの利用手数料のみ」という給与前払いサービスもあります。
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    3.4リスクの違い

    貸金業として登録していない業者が実施する給与ファクタリングは、金融庁によって違法であるとの指摘がされています。また、仮に貸金業登録をしていたとしても、出資法や利息制限法に違反している可能性が高いことは否めません。

    また、違法な闇金融を営む者が「給与ファクタリング」と称してサービスを実施しているケースが数多く見受けられます。反社会的勢力と関係のある悪質業者と契約すると、暴利を貪られ、生活を完全に破壊されてしまいます。

    他方、給与前払いサービスは、金融庁によって「貸金業ではない」と明確な回答を得ているので安心です。

     

    給与ファクタリング まとめ

    それぞれのメリット・デメリット

    ここからは、給与ファクタリングおよび給与前払いサービスのメリット・デメリットについて説明していきます。

    4.1給与ファクタリングのメリット・デメリット

    以下は、給与ファクタリングのメリットです。

    ・信用情報機関に給与ファクタリングを利用した事実が登録されない
    ・勤務先が倒産した場合の給与未払いリスクを給与ファクタリング業者に転嫁できる

    給与ファクタリングでは信用情報機関への登録が行われないため、クレジットカードの限度額に影響を及ぼす心配がありません。

    消費者金融から借り入れたり、クレジットカードのキャッシング機能を利用したりすると、信用情報機関に借入金額など情報が登録されます。年収の3分の1までしか融資を受けられない「総量規制」が存在するため、信用情報機関への登録を避けたいとお考えの方は、給与ファクタリングに魅力を感じるのではないでしょうか。

    また、給与ファクタリングは信用情報機関に照会が行われないため、過去に延滞したなどの金融事故を起こした方(いわゆる「ブラックリスト」に掲載されている状態)でも利用可能です。そのほか、あらかじめ賃金債権を買い取ってもらっていれば、勤務先が倒産した場合に給与が未払いになるリスクを給与ファクタリング業者に転嫁できることもメリットといえるでしょう。

    しかし、給与ファクタリングには、以下に示すようなデメリットもあります。

    ・手数料が極めて高い
    ・悪徳業者が紛れ込んでいる可能性がある
    ・金融庁から「貸金業に該当する」と指摘されている

    給与ファクタリングの手数料は、一般的に消費者金融やクレジットカードのキャッシング機能を利用した場合よりも割高であり、年利に換算すると数百%を超えるケースも多数存在します。また、給与ファクタリング業者の一部には、いわゆる「闇金業者」が紛れ込んでいる可能性があるという点にも注意しなければなりません。

    なお、金融庁は「労働者が使用者に対して有する賃金債権を買い取って金銭を交付し、当該個人を通じて当該債権にかかる資金の回収を行うことは、貸金業に該当する」という主旨の指摘をしています。そのため、貸金業者として登録していない給与ファクタリング業者は、法律に違反して営業している可能性があります。

    4.2給与前払いサービスのメリット・デメリット

    以下は、給与前払いサービスのメリットです

    ・金融庁から「貸金業に該当しない」という回答を得ている
    ・信用情報機関への照会・登録が行われない
    ・勤務先が福利厚生の一環として導入するサービスなので安心して利用できる
    ・企業の魅力が高まり、人材獲得や離職率低下につながる

    給与前払いサービスは、金融庁から「貸金業に該当しない」というお墨付きを得ています。また、勤務先が導入するサービスなので労働者側としては安心・安全です。なお「融資」ではないため、信用情報機関への照会・登録が行われません。企業側にとっても、福利厚生の一環として導入することにより、多様な人材の確保に結びつき、離職率低下にも役立ちます。
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    ただし、給与前払いサービスには、以下のようなデメリット・注意点もあります。

    ・勤務先が導入していない場合は利用できない
    ・勤怠データと連携させる必要がある

    給与前払いサービスは、給与ファクタリングと異なり、労働者が個人で契約するサービスではなく、勤務先が導入するものです。勤務先が導入していない場合は利用できません。

    なお、企業側としては勤怠データとの連携が必要になりコストがかかる場合があります。また、既存の給与計算システムとも連携できるかどうか確認が必要です。勤怠管理・給与計算システムを導入していない場合は新規導入を検討しなければなりません。

     

    安心して利用できるのは?

    安心して給与を支払日前に受け取りたい方は給与前払いサービスを利用しましょう。給与前払いサービスは金融庁から「貸金業に該当しない」というお墨付きを得ています。労働者個人が契約するものではなく、勤務先が福利厚生の一環として導入するサービスなので、安心・安全です。

    他方、給与ファクタリングは金融庁から「貸金業に該当する」と指摘されています。「給与ファクタリング」と称して、事実上の高利貸しを営む悪徳業者も存在します。反社会的勢力や闇金業者の参入も指摘されているため、あまり利用はおすすめできません。

     

    まとめ

    給与ファクタリングと給与前払いサービスは、「仕組み」「法的位置づけ」「手数料」「リスク」が異なります。

    給与ファクタリングは金融庁によって「貸金業に該当する」と指摘されています。なお、多くの業者は貸金業の登録を受けずに営業しているため、貸金業法違反の可能性があります。また、闇金業者が給与ファクタリングのサービスを実施しているケースもあるため、利用をおすすめできません。

    それに対し、給与前払いサービスは、金融庁からは貸金業に該当しないと判断されており、勤務先が福利厚生の一環として導入するものなので安心・安全です。労使双方にメリットがあるため、今後、導入企業が増えていくのではないでしょうか。

    以上、本記事が、給与ファクタリングと給与前払いサービスの違いについて調べている方のお役に立つことができれば幸いです。

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